Interview

“無自覚最強”を世界へ届ける:ESEライツ担当が語るアニメ化とIP展開の舞台裏 

CEグループのアース・スター エンターテイメント(以下、ESE)が2020年に刊行した『俺は全てを【パリイ】する〜逆勘違いの世界最強は冒険者になりたい〜』(以下、『俺は全てを【パリイ】する』)は、昨年7月4日にアニメ化され地上波放送されました。(各種配信サイトで、絶賛配信中です!) 
過去には『ヤマノススメ』や『冒険者になりたいと都に出て行った娘がSランクになってた』など、また今年の秋には『野生のラスボスが現れた!』と『無職の英雄 ~別にスキルなんか要らなかったんだが~』が放送開始となります。

このように、アニメ化を軸に様々なメディアやプラットフォームにてIP展開を進めているESE。  
著者が生み出した著作物の権利(ライツ)を管理し、展開を仕掛け、原作をより大きく広めるために、出版社のライツ担当はどのようなことを考えているのでしょうか。 
今回は、ESE ライツ事業部の平野さんに、『俺は全てを【パリイ】する』のアニメ化の時のお話を中心に、お仕事の内容ややりがいについて、話を伺いました。 


TVアニメ『俺は全てを【パリイ】する〜逆勘違いの世界最強は冒険者になりたい〜』作品情報  

「才能なしの少年」そう呼ばれて養成所を去っていった男・ノールは、一人ひたすら防御技【パリイ】の修行に明け暮れていた。
ある日、魔物に襲われた王女を助けたことから、最低ランクの冒険者にもかかわらず王女の指南役となったノールだが…その空前絶後の能力を、いまだノールだけが分かっていない…。
無自覚最強は危機に陥った王国を救えるか!? 

現在、ABEMAなど各種配信サイトで配信中。 

TVアニメ『俺は全てを【パリイ】する〜逆勘違いの世界最強は冒険者になりたい〜』公式サイト
原作ノベル:『俺は全てを【パリイ】する~逆勘違いの世界最強は冒険者になりたい~』特集ページ
コミカライズ:『俺は全てを【パリイ】する ~逆勘違いの世界最強は冒険者の夢をみる~』

©鍋敷/アース・スター エンターテイメント/俺は全てを【パリイ】する製作委員会


現在の業務内容を教えてください 

ESEのライツ窓口を担当しており、ノベル・コミック原作を映像化するための営業活動や、ライセンスアウトした作品の監修が主な仕事です。現在はESE原作のアニメが複数製作されているため、その監修をすることが多いです。 

ライツビジネスの面白さはなんですか? 

作品のポテンシャルを最大限に高め、より多くの人に広めていくことが、ライツの仕事の醍醐味です。作家さんが0を1にするとしたら、ライツの仕事は作家さんが生み出した1を100にできる可能性があると考えています。
ライツビジネスには、アニメ・映画・ドラマ・舞台・グッズなど様々な展開がありますが、私は中でもアニメ化に携わっている時が一番面白いですね。単に使用許諾を出すだけでなく、その作品のクリエイティブな側面にも踏み込んで、原作の世界観や魅力を広げるコンテンツに仕上げていく過程がとても楽しいです。

また、アニメが評価されれば原作書籍の売上も上がるため、目に見える形で結果が出る点も非常にやりがいがあります。私たち原作出版社にとって、作品をアニメ化する最大の目的は、多くの方にその作品を知ってもらい、ノベルやコミックを手に取ってもらうことです。より多くの方に作品を楽しんでいただけて、その結果、原作者が喜んでくれた時は、ライツの仕事をしていて良かったと感じる瞬間ですね。

アニメ『俺は全てを【パリイ】する』のアニメ化を機に、作品をより多くの人に届けるために意識したことは?  

アニメ放送後にコミックの売上が大幅に伸び、一気に100万部を突破することができました。これは、アニメ制作サイドと編集部がうまく連携できたからこその成果だと思います。  
アニメの放送スケジュールは、通常6〜9か月前には決まっているため、そこから逆算していかに効果的なスケジュールで書籍を販売するかが重要になります。今回は、アニメ放送のタイミングに合わせてコミックの新刊を出したり、書店での平積み展開を実施してもらったり、適切なタイミングで施策を打つことができました。

また、宣伝担当者と密に連携をとりながら、いろいろなプロモーション施策を展開しました。たとえば、アニメに出演する声優さんにコミック版のCMにも出てもらいアニメと原作の世界観に統一感を持たせたり、アニメ放送前のタイミングでエイプリルフールのネタを仕込んでSNSで話題をつくったり。地味に見えるかもしれませんが、ひとつひとつ丁寧に仕掛けていきました。  
さらに、同じCEグループのブリッジヘッドさんにCM制作をお願いしました。CMにはお笑い芸人のムーディ勝山さんと、ESE所属のアーティスト・花耶さんに出演していただき、多方面から作品を知っていただくきっかけをつくることができたと思います。  

 アニメ『俺は全てを【パリイ】する』について、海外からの反響はいかがでしたか?

アメリカ・ロサンゼルスで開催された「Anime Expo 2024」では、第1話と第2話の先行上映が行われたのですが、上映中ずっと笑いが起きていて、会場の反応もとてもよかったです。日本人にとってはわりと当たり前のように受け入れているノールの謙虚さが、海外では独特で面白く映るというのは、新しい発見でした。  

 アニメ『俺は全てを【パリイ】する』作品監修の際、特にこだわったポイントはありますか?  

絵コンテの段階から主人公の表情にこだわりました。
ノールというキャラクターが決して誰かを恨んだり敵意を見せたりしないことは、原作の物語にとって重要なポイントのひとつです。相手が敵であっても、ノール自身はあくまで助けているつもりで行動しており、そこに敵意は一切ありません。アニメにおいてもこのノールの精神性を、表情でしっかりと伝えることが重要だと考えたのです。  

ライツ担当として、大切にしていることはなんですか?  

目の前のことに追われて大事なことを後回しにしないことだと思います。監修作業や原作の読み込みなど、地道だけど大切なことを、ひとつひとつ丁寧にこなしていく。そうした積み重ねが、信頼につながっていくと思うんです。「まぁあとでいいか」と後回しにすると、あとで必ず大きな問題になります。大事なことを後に回さず、真摯に向き合うこと。それが結果的に一番の近道だと思います。  

そしてもうひとつ大事なのが、橋渡し役としての役割を全うすることです。アニメ制作の現場では、監督・脚本家・原作者など、それぞれの立場で大切にしていることや譲れない思いがあります。時に意見がぶつかることもありますが、全員に共通しているのは「良い作品をつくりたい」という想いです。だからこそ、私たちライツ担当がその間を丁寧につなぐことが大事になるのです。  

今後挑戦したいことは?  

今後は製作幹事にも挑戦していきたいと考えています。現在は原作出版社として製作委員会に参加する立場が多いのですが、幹事会社になることで、より主体的に作品づくりに関われるようになります。ライツとしては特に、幹事会社になれば海外販売窓口を自分たちで担えるという点に大きなアドバンテージを感じています。  
日本のアニメIPは、世界中にファンがいます。だからこそ、海外展開に積極的に取り組むことで、作品の広がり方も大きく変わっていくはずです。今後もライツとして、その可能性を最大限に活かせるような取り組みを進めていきたいです。 

読者の皆様に一言お願いします 。

10月から『野生のラスボスが現れた!』と『無職の英雄 別にスキルなんか要らなかったんだが』のアニメ放送が始まります。両作品とも私が担当している作品ではないのですが、制作は順調だと聞いています。

『野生のラスボスが現れた!』は、かつて”黒翼の覇王”と恐れられた王ルファスが、200年の時を経てかつて配下にいた覇道十二星天たちと再会しながら共に旅をし、魔神族との闘いに挑むお話です。ほりうちゆうや監督による、迫力のあるバトルアクションシーンが見どころです。
『無職の英雄』については、個人の努力で力を身につけ我が道を突き進む主人公アレルの快進撃をご覧頂きたいです。声優キャストも小野賢章さん、早見沙織さん、上坂すみれさんと錚々たる顔ぶれです。

また、アニメ化がすでに発表されている『転生した大聖女は、聖女であることをひた隠す』『ヘルモード』だけでなく、さらに多くの作品のアニメ化が決定しています。今年から来年にかけて、続々と発表していくので、是非とも楽しみにしていただければと思います。